怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~

 どうせ今日も不参加なのだろう。なにせ彼女はほとんどこういった場に参加したことがないのだ。だから当然、今日の慰労会にも不参加だろうと初めから決めこみ、姿を探すことはしなかった。

 けれど、慰労会が始まって一時間ほどが経過した頃。もはや主役の俺を置き去りにして盛り上がる会場の中、俺の視線が不意に彼女を発見する。いないと思っていたはずの優月がいたのだ。

 賑わう共有スペース内のすみっこの席に腰を下ろし、ケータリングの食事をひとりで食べていたらしい。

 もともと目立つタイプの女性ではないし、今日も絶対に不参加だろうと思っていたので、俺としたことが優月の存在に気が付かなかった。知っていたら真っ先に声を掛けたのに。


『小野坂さんも参加していたのか』


 横からそっと近付いて声を掛けると、優月がパッと振り向いた。おそらく一度も染めたことがないであろう艶のある黒髪が胸のあたりでふわりと揺れる。

 突然声を掛けられたことに驚いているのか、真ん丸な目をさらに大きくして俺を見上げる様子はなんというか……とてもかわいい。

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