怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
『隠岐先生。今日の裁判、勝訴おめでとうございます』
『ありがとう』
もう何度も言われた祝福の言葉も優月の口から聞くとまるで今初めて聞いた言葉のように新鮮でうれしくなる。そんな気持ちを少しも隠すことなくにっこりと微笑みながら、俺は優月のすぐ隣に腰を下ろした。
『珍しいな。小野坂さんがこういう場に参加しているの』
『そうですね。いつも不参加ですみません』
別にそのことを責めるために言ったわけではないが、優月はばつが悪そうに頭を下げた。そのまま俯いている彼女がどこか浮かない表情を浮かべていることに気が付く。
そういえばここ最近の優月はぼんやりとしていることが多かったし、無自覚に小さなため息をこぼしていることもあった。おそらく誰も気づいていないだろうけれど、彼女に好意を寄せる俺は優月のそんな小さな変化にも気づいていた。
今もどこか落ち込んだ様子だ。
『元気がないな。なにかあった?』
そっと顔を覗き込んで尋ねてみるものの、『なんでもないです』と優月が首を横に振る。真っ白なシフォンスカートの上に置かれた小さな両手がぎゅっと固く握られているのに気が付いた。
これは絶対になにかあっただろう。