怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
弁護士として数々の相談を受けているうちに、こういった相手の反応には目敏く気付くようになってしまった。
今の優月は明らかに落ち込み、悩んでいる。めったに参加することのない場に珍しくいるのもそれが関係しているのだろうか。
なにか事情を抱えているのなら力になりたい。
俺は、ソファの背もたれに片腕を乗せると、優月の方にぐっと体を近付けた。
『ダメ元で誘うんだけど、小野坂さんはこのあとなにか予定ある? なにもなければ俺と飲みに行かないか』
どうせまたいつものように断られるのだろうと思いつつ試しに誘ってみた。すると、優月がハッとしたように顔を上げる。
『飲みにですか? ちなみにどちらへ?』
『えっ』
今までとは違う反応につい面食らってしまう。どんなに食事に誘っても返ってくる言葉はいつも‟ごめんなさい„だったのに、初めて行先を尋ねられた。
『それじゃあ俺の行き着けのバーはどうだろう。食事はもうここで済ませただろうし、美味しいお酒でも一緒にどうかなと思って。小野坂さんはアルコール平気?』
『……はい』
間は空いたもののうなずいたところを見ると大丈夫なのだろう。