怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
『それならバーに行こう。ひとりで飲むのもつまらないし寂しいから、小野坂さんが隣にいてくれるとうれしいんだけど』
おそらく彼女が抱えているであろう悩みもそこで聞いてあげようと思った。
俺は、ぎゅっと固く握られたままの優月の両手に自身の片手をそっと重ね、優しく握り込む。すると、優月と視線がぶつかり、彼女の口がそっと開かれた。
『わかりました。私でよろしければご一緒させてください』
『本当!?』
てっきりいつものように秒で断られると思っていたが、これは予想外の展開だ。
それからふたりで事務所を抜け出し、俺の行き着けのバーに到着したのは午後九時。
この店は酒の種類が豊富なのもいいし、なにより雰囲気がいい。
ビルの五階にあるガラス張りの店内からは夜景が見え、開放的な落ち着いた空間でゆったりとした気持ちでお酒を楽しむことができる。
純粋に酒を楽しんで飲みたい人が集まるような店なので、悪い酔いするようなめんどくさい客や、潰れるまで飲むような客もめったにいない。
けれど、今日は例外がいた。
いや、俺が例外を作ってしまったのかもしれない――。