怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
『もう本当にお母さんなんて大嫌い! 顔も見たくない! 私の話なんてなにも聞いてくれないんだから! 私とっても怒ってます!』
『はいはい。わかったから、少し落ち着こうか』
『落ち着いてなんていられません! 今夜はもうここで飲みまくります! 隠岐先生、朝まで付き合ってください!』
『いや、さすがにそれはできないかな』
優月と酒を飲むのが初めてだから気が付くのに遅れてしまった。
おそらく彼女は酒に弱い。というよりも飲み慣れていない。そのせいで自分の限界もわからず飲みすぎて潰れかけている。
アルコールは平気かと尋ねたときに大丈夫と口にした彼女の答えを鵜呑みにしなければよかった。そういえばあのとき答える前に少しの間が空いたな。本当は平気じゃなかったのか……。
店に着いてからハイペースで飲み続ける姿に、見掛けによらず酒好きなのかと勘違いしてしまった。そうではなく、優月の場合は‟そういう気分„だったのかもしれない。
彼女は今夜、酒に溺れたかったのだろう。それを見抜けずバーに連れて来てしまった俺が悪い。