怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
なにかに悩んでいるのはわかっていたが、優月の性格を考えるとその苦痛からの逃避のために酒の力を借りるとは思わなかった。
彼女をこんなにも酔わせてしまった責任は半分俺にあるのかもしれない。
『小野坂さん、飲みすぎだ。もうやめよう』
『嫌です。まだ飲めます』
『いや、本当にもうやめた方がいい。はい、とりあえずこれ飲んで』
『ありがとうございます。もう一杯いただきます』
俺が渡した水を酒だと思って飲んでいるあたりもう自分がなにを飲んでいるのかもわからないのだろう。
大丈夫か? いや、ダメだなこれは。
『小野坂さん、もう帰ろうか。タクシー呼ぶから自宅の住所教えて』
『自宅なんてありません』
『そんなことないだろ』
すっかり酔い潰れている優月の相手をしつつ、顔見知りのマスターにクレジットカードを渡し会計を済ませる。彼女か?と聞かれたけれど、まだ違いますと苦笑した。
カードを財布に戻したところでふと隣が静かになっていることに気が付く。そちらに視線を向けた俺の口から思わず『マジかよ……』と声が漏れた。