怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
ほんの少し前まで俺と話していたはずなのに少し言葉が途切れた途端にどうやら優月は夢の中へと行ってしまったらしい。
カウンターテーブルに突っ伏して、すやすやと寝息をたてている。
酔っ払いの行動は予測ができない。
『おい、小野坂さん。起きてくれ。ここで寝られても困る』
優しく体を揺すってみるものの起きる気配がない。完全に寝入ってしまったようだ。
時刻は午後十時。バーの閉店まではまだ時間があるがこのままここで寝かせるわけにもいかない。家に送っていきたいが俺は彼女の自宅を知らないし。さて、どうしたものか……。
そう考えながらふと思い出したのは、お酒を飲みながら優月が俺に打ち明けてくれた悩みのこと――どうやら彼女は母親に見合いを強要されているらしい。
頑なに拒み続けているものの、母親が少しも耳を傾けてくれないのでこのままだと強引に見合いをさせられ、おそらくその相手と結婚をすることになるのだとかなり落ち込んでいた。
さらに詳しく話を聞いたところ、業務終了後に行われる事務所の飲み会や、俺の食事の誘いをいつも断っていたのは、母親に厳しく帰宅時間を決められていたからだという。