怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
彼女が目を覚まさなければこのまま俺のベッドで朝まで寝かせようと思っていた。でも、目を覚ましたのなら酔ってはいても住所くらいは聞き出して送り届けることはできるだろう。
そう思ったが、優月は静かに首を横に振った。
『家には帰りたくありません。……母にお見合いをさせられるから』
『小野坂さん』
ぽつりと呟いた優月の声が弱々しくて、俺は再びベッドに腰を下ろす。それから隣の彼女に視線を向けた。
『そんなにお見合いがしたくないのか?』
『はい。だって、結婚相手まで母に決められてしまったら私の人生はすべて母の言いなりになっちゃう。それだけは嫌です……』
『そうか』
これと同じような言葉をバーで何度も聞いた。俺の口から思わずため息がこぼれてしまう。
『俺だってきみに見合いなんてしてほしくないよ。誰かに取られるくらいならこのまま俺のものに……』
とっさにこぼれた本音に、マズいと思ってすぐに口を閉じた。
隣で優月がきょとんとした顔で俺を見つめている。
彼女に片想いを続けて約二年だ。
食事に誘う以外にもいろいろとアプローチはかけていて、例えば彼女の休憩時間に合わせて俺も休憩を取るようにしてみたり、食べたいと話していたスイーツを購入して仕事の合間の差し入れにしたり、地方へ出張に出掛けたときは彼女にだけ別のお土産を買ってきたり……。