怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
その言葉の意味がわからずきょとんとしていると、向かいに座る瑠奈の人差し指が私のお腹あたりをピシッと指差す。
「あの一夜で隠岐先生との間に子供ができたんでしょ。それで突然、結婚したのかなと思って。ほら、私のときみたいに」
そう言って、瑠奈の人差し指が今度は自分の顔に向けられる。そこでようやく彼女の言葉の意味がわかった私は、両手を大きく横に振った。
「ち、違うよ。妊娠はしてない」
慌てて否定をする。これについては絶対にあり得ないと言い切れる。
あとから聞いた話によると悠正さんはあの夜きちんと避妊をしてくれていたみたいだし、私もあの日以降に生理がきている。
すると、瑠奈は「そっか」と呟いた。
「でも、それならますます優月の結婚には疑問なんだけど。交際をすっ飛ばして、どうしていきなり結婚?」
「それは、お互いの家の事情というか……」
「家の事情?」
首をかしげる瑠奈に私は悠正さんとの結婚の経緯を説明した。
私は母の束縛から解放されるため。悠正さんは病気の父親を安心させるため。私たちは結婚という事実が欲しくて、婚姻届を出して夫婦になった。