怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
「優月。ここに座って」
そう言って、私に椅子を譲ってくれた。
どうやらこの病室には椅子がひとつしか置かれていないらしく、悠正さんはズボンのポケットに手を突っ込むと背後にある壁に軽く背を預けるようにして立つ。
私が座ってもいいのだろうかと椅子と悠正さんを交互に見ていると、「座っていいよ」と優しく促された。
お言葉に甘えて座らせてもらうことにすると、ベッドに座っている所長と目が合いにこにこと微笑まれる。
「優月さん。悠正との新婚生活はどうかな。息子がきみに迷惑を掛けていないだろうか」
「いえ、そんな。悠正さんはとても優しいです」
そう答えながら思い出してしまうのは昨日の彼の言葉。
『俺が優月に見合いをしてほしくないから、確実にきみを手に入れるために仕掛けた結婚だとしたら?』
それは本当なのだろうか。でも、悠正さんには忘れられない女性がいるのでは? なんだかもういろいろとわからなくなってきた。
『優月。俺は――』
これに続く言葉はなんだったのだろう。
あのあと、携帯端末を耳に当てた悠正さんがリビングを離れてしまったから、彼の言葉は途中で切れてしまった。