怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~


「――そんなことがあったのか……」


 俺の手は自然と優月に伸びていて、額の傷を撫でていた。


「もう痛くないので大丈夫ですよ」


 そう言って、クスリと笑う優月を思い切り抱き締めたくなった。

 無事でよかったと心の底から思う。


「私を助けてくれた配達員の方がすぐに警察に通報してくれて、そのあと母も現場にやってきました。すごく取り乱して、私を抱き締めると声を上げて泣いていて……」


 そりゃそうだろう。

 十年も前に起きた事件を聞かされた俺ですら動揺してしまったのだから、その当時の優月の母親はとても不安だったに違いない。

 ふと優月を束縛していた母親の顔が思い浮かんだ。


「私の母が私に過保護なのはその事件がきっかけなんです。その一カ月前に父が自ら命を絶ってしまったので、今度は娘の私まで失うかもしれないと母はすごくこわい思いをしたそうです」

「なるほど」


 旦那を失ったわずか一カ月後に今度は娘を誘拐未遂事件で失いそうになった優月の母親は、そのときの恐怖や不安が消えず、もう二度と同じ目に合わせないためにも優月を安全な場所に置いておきたくて過度に束縛するようになった。

 つまり、あの母親は優月のことを守ろうとしていたのか……。

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