怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
どうやら優月はそのとき父親の自殺についても俺に話したつもりになっていたのだろう。
「父が亡くなったあとで弁護士の男性が家にいらしたことがあったんです。父の仏壇に手を合わせながら涙を流していたことを今でもよく覚えています」
「涙を?」
「はい。裁判では父の無罪を証明することができたけど、犯人だと疑われてしまった父の会社での立場や信用を回復することができなかったのが悔しい。力が及ばす申し訳なかった。そう言って、私と母に頭を下げたんです」
「へぇ」
そんな風に依頼者のために泣ける弁護士もいるのだと正直驚いた。
無実を証明できた時点で弁護士としての仕事は終わっているはずだ。親身になりすぎな気もするけれど、そのくらいの情熱を持っていたということだろうか。
俺に同じことができるのかと聞かれるとできない気がした。
もちろん依頼者のために寄り添い全力を注ぐようにはしているが、正直なところ俺はそこまで深く事件には関わらないようにしているし、仕事を離れたら頭を切り替える。
優月の話した弁護士のように依頼者に親身になり過ぎると自分自身が悩みすぎてしまうからだ。深く背負い込まないためにも、仕事とは一定の距離を保つのが俺の考えだった。