怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
私が再び同じような事件に巻き込まれるかもしれないという恐怖が常につきまとうようになり、そうした不安から母は私を過剰に束縛するようになったのだ。
一方の私も自分が誘拐未遂事件に巻き込まれてしまったばかりに母に心配をかけさせてしまったことをずっと後悔している。
だからもうこれ以上、母に私のことで心配をけないように門限や外泊禁止など母に決められたことはしっかりと守ってきた。
けれど昨日は、それを初めて破った。
そうしたくなるくらいの強い不満が私にはあったから……。
《とりあえず早く家に帰ってきなさい。今日はお母さんと一緒に来週のお見合いに着ていくワンピースを買いに行くって約束していたでしょ》
「そのことなんだけど、やっぱり私……」
《だめよ。お見合いは絶対にしなさい》
ぴしゃりと母は言い放つ。
《このお見合いは優月のためなの。お母さんの決めた相手と結婚をすれば、優月はこの先も必ず幸せに安心して暮らせるわ。だからお見合いはしなさい。いいわね》
「……っ」
母の言葉に私はなにも言い返せず唇をかみしめる。
子供の頃からなんでも母に決められて生きてきた私は、母に反抗するのがあまり得意ではない。母に言われたことはなんでも素直に受け入れようとしてしまう。