怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
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「はぁ……」
つい吐き出してしまったため息が思ったよりも大きくてびっくりした。それが聞こえたのか隣の席の菊池さんの視線が私に向けられる。
「なによ、どうしたの。大きなため息ね。悩み事? あっ、わかった。優月ちゃん、旦那様とうまくいってないんでしょ」
「えっ、優月さん。隠岐先生とケンカでもしたんですか?」
向かいの席の戸田さんもさっそく会話に混ざってくる。
「そういえば今日はふたりともなんだかよそよそしいですよね。いつもなら隠岐先生は用事がなくても優月さんに声を掛けにくるのに今日はそれもないし」
「そうよね。さっきも隠岐先生、いつも優月ちゃんに頼んでいる仕事をわざわざ私に頼んできたし」
「そうなんですか?」
菊池さんの言葉を聞いてつい声を上げてしまう。知らなかった。でも、これでもうはっきりとした。
悠正さんは私のことを避けている。
きっかけは昨日の告白に間違いないと思う。
私が逃げるようにリビングを飛び出してしまってから、自宅でも職場でも悠正さんは私に話し掛けてこないし、目すら合わせてくれない。
「なんだか今日の優月さんと隠岐先生は夫婦というよりも他人のような距離感ですよ」
戸田さんに言われて思わず苦笑が漏れた。