怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
他人、か……。
もともとはそうなのだ。私たちは本物の夫婦じゃない。お互いのメリットのために結婚した偽物の夫婦。それは他人も同然だ。
『俺は、優月を愛してる』
昨日の悠正さんの告白を思い出す。
突然のことに動揺した。私にとって悠正さんは憧れの弁護士。そんな方に‟愛してる„と言われたことが信じられなくて、思わず口から出た言葉が‟ごめんなさい„で……。そのまま悠正さんから逃げるようにリビングを去ってしまった。
「最低だ、私……」
ぽつりとこぼれた声は菊池さんと戸田さんにも聞こえたらしい。ふたりは顔を見合わせると、その視線が同時に私へと向かう。
「優月ちゃん、大丈夫?」
「悩みがあるならいつでも相談してくださいよ、優月さん」
そんな優しいふたりの同僚に「大丈夫です」と精一杯の笑顔を作り、私は手元の仕事の続きを再開させた。
塞ぎこんだ気持ちのまま午後になると、弁護士先生に頼まれて裁判所へ書類を届けに出掛けた。
そこでまたしてもあの人に遭遇してしまう。
「あれ、どこかで見たことある子がいると思えば隠岐の奥さん」
「こんにちは」
鏑木さんだ。
弁護士の彼も裁判所に用事があったのだろう。そして私と同じタイミングで用事を済ませて、これから自分の事務所へ戻るところらしい。