怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
どうやら方向が同じようで、鏑木さんが私の隣を歩き出す。
「ねぇ、これからお茶でもどう?」
「すみません。仕事中なので」
「俺もそうだけど、ちょっとぐらいいいじゃん」
「すみません。急いでいるので」
鏑木さんの誘いを断りつつ、ひたすら足を前に進める。
鏑木さんとは関わらない方がいいと悠正さんに言われているので、彼から離れるべく歩く速度を速めた。けれど、鏑木さんも私のペースに合わせてきたので、やっぱり隣合って歩くことになってしまう。
「隠岐とはうまくやってるの? 結婚生活は順調?」
「……はい」
「あ、今なんか間が空いた。順調じゃないの?」
「いえ、そんなことないです」
本当は順調ではない。いや、昨日までは順調すぎるくらい順調だった。それなのに今の私は悠正さんに避けられている。
愛していると言ってもらえたのに……。どうして‟ごめんなさい„と彼を突き放して、あの場から逃げるように去ってしまったのだろう。
たぶんもう嫌われただろうな。
「あっ。噂をすれば隠岐発見。あいつなにしてるの?」
鏑木さんの声にピクッと反応してしまう。
彼の視線の先を辿ると、二車線の道路を挟んだ向かいにあるカフェのテラス席に、スーツ姿の悠正さんを見つけた。