怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
そういえば、私が事務所を出る前から彼もまた外出しているようで個室を不在にしていた。
カフェにいる悠正さんはどうやら私たちには気が付いていないようだ。
「女と一緒じゃん」
鏑木さんが呟いた通り、悠正さんの向かいの席にはひとりの女性が座っていた。
ショートカットの髪が印象的なパンツスタイルのスーツを着た女性。はっきりと顔は見えないものの、漂う雰囲気が美人を醸し出している。
「あれはどう見ても不倫だろ」
鏑木さんが私の隣にぴたりと寄り添い、耳元でそう告げてくる。
「隠岐と一緒にいる女のこと俺知ってるけど、知りたい?」
「えっ」
「隠岐の元カノ」
「え⁉」
思わずぎょっと目を剥いてしまう。
悠正さんの元カノ……。
「隠岐のやつ、やっぱり今も忘れられてなかったみたいだな。ほら、俺の言った通りだっただろ。隠岐には忘れられない女性がいて、そいつを無理にでも忘れるためにきみと結婚をしたんだ。その女があいつだよ」
鏑木さんの視線が再びカフェのテラス席へと向かい、私もそこにいるふたりのことを見つめる。
あの女性が悠正さんの忘れられない人……。
最近ではもうそのことについては考えないようにしていたけれど、やっぱり本当のことだったんだ。