怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
「たまたまどこかでばったりと再会でもして、むかしの恋に火でもついたのかもな。よくある話だ」
鏑木さんの手がスーツの胸ポケットに向かった。そこからなにかを取り出すと、それを無理やり私の手に握らせる。
「これ、俺の名刺。もしも隠岐と離婚することになったら連絡して。不倫の慰謝料をあいつからがっぽりと取ってあげるから」
「えっ、あの……」
「じゃあな」
そう言って、鏑木さんは私に背を向けるとこの場を去ってしまった。
取り残された私の視線は再びテラス席に向かう。そこではまだ悠正さんと女性が話をしていた。
悠正さんがなにかを話して、女性がそれに同意するようにうなずく。そんな風に談笑を続けるふたりを見ていたら、なんだか胸の奥がじくじくと疼くのを感じた。
鏑木さんから貰った名刺を持つ手に自然と力がこもる。
これ以上ふたりの姿を見ているのがつらくて私は素早く視線を逸らした。そのままとぼとぼと歩き出し、私は事務所に戻ることにした。