怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~

 その日、仕事を終えてマンションに帰っても思い出すのは昼間の光景。

 あのあと悠正さんが事務所に戻ったのは営業時間終了の一時間前で、そこから個室にこもって仕事をしていた。

 一度だけ事務員フロアに顔を出したけれど私の席を通り過ぎて菊池さんに声を掛けていた。頼んでいた書類の受け取りにきたのだろう。それを預かるとまた私の横を通りすぎ、足早に個室へと戻ってしまった。

 そんな彼の態度にひどく胸が痛んだ。

 悠正さんの帰宅は今日も遅いのだろう。晩ご飯はいつも通りふたり分用意した。でも、食べてもらえるかわからない。

 そもそも帰ってくるのだろうか。昼間のカフェで一緒にいた女性と夜も過ごしたり……。

 そんな妄想をしてしまい、さらに自分の気持ちが沈んでいく。

 ひとりで晩ご飯を食べようとしていたところで玄関の扉の開く音がした。悠正さんが帰ってきたようだ。遅くなると思っていたので、随分と早い帰宅に慌ててしまう。

 まだどんな顔で彼の前に立てばいいのかわからない。

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