怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
「おかえりなさい」
リビングに入ってきた悠正さんに声を掛けると、「ただいま」と返事がくる。それが今日初めて私たちが交わした会話だった。
無視はされなくてよかったと胸を撫で下ろす。
「悠正さん、ご飯は?」
キッチンでグラスに水を注ぎ喉に流し込んだ彼に声をかけると、その視線が一瞬私に向いた。けれど、すぐに逸らされてしまう。
「俺のもあるの?」
「はい、もちろん。食べますか?」
「それじゃあいただこうかな」
「はい」
私はすぐにイスから立ち上がり、悠正さんのいるキッチンへと向かった。入れ替わるように悠正さんがキッチンを素早く出てしまい、また避けられたようで少し落ち込む。
すると、着替えるためにリビングを出ていこうとしていた悠正さんの動きがピタリと止まっていることに気が付いた。
彼の視線はどこかをじっと見つめている。その姿に、どうしたのだろうと不思議に思っていると、「優月」と低い声で名前を呼ばれた。
悠正さんの手がローテーブルの上に置かれているなにかを掴み、それをくしゃりと丸める。
「どうして優月が鏑木の名刺を持っているんだ」