怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
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悠正さんに離婚届を渡してからマンションの外に飛び出ると、ひとりの女性がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
ショートヘアが印象的なパンツスタイルのスーツの女性――悠正さんの元恋人だ。
「もしかして、優月さん?」
彼女が私の前で立ち止まり声をかけてくる。こうして顔を合わせるのも言葉を交わすのも今日が初めてだ。
「腕の怪我は大丈夫?」
心配そうな表情で尋ねられて「はい」と小さくうなずいた。すると、彼女が私に向かって深々と頭を下げる。
「今回のこと、本当にごめんなさい。私が狙われていたのに、あなたを巻き込んでしまって。腕の怪我のことも、どうお詫びをしたらいいか……」
「いえ。そんなに気にしないでください」
あのときはとっさに体が動いて、包丁を持った男の前に立っていた。そして腕を切られてしまったけれど、それは彼女のせいではない。だからどうか頭を上げてくださいと伝えると、ようやく彼女はそっと顔を上げてくれた。
こうして近くで見るときれいな人だと改めて思う。さすが悠正さんの元恋人だ。お似合いのふたりかもしれない。
彼女のスーツの襟元には今日も弁護士バッジが付いていて、やはり悠正さんと同じ弁護士なのだろう。