怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
ふたりを庇おうとしたのは私自身の判断だ。雪平さんはこうして謝罪をしてくれるけれど彼女のせいではない。
確かに腕を切られたときは痛みもあったしこわくもあった。でも、幸いなことに私は無事だ。私の腕の怪我だけで済んでよかったと今は思える。
「だからもう本当に気にしないでください。私のことよりも、雪平さんには瑠奈のことをよろしくお願いします」
これ以上、今回のことで雪平さんに自分を責めてほしくはなくて、私は笑顔でそう告げた。すると、たっぷりと一拍置いたあとで「ええ、もちろん」と雪平さんがうなずいてくれる。
「優月さんの大切なお友達のことは私に任せて。全力で彼女の力になるわ」
そう答えた雪平さんの表情がようやく少し和らいだ気がした。そんな彼女の肩に悠正さんがそっと手の乗せる。
「律花。優月もこう言ってくれているんだ。今回の件での謝罪はもうやめよう」
「隠岐君」
そのまま見つめ合うふたりを見ていたら、胸がズキンと痛んだ。
悠正さんは雪平さんのことがまだ好きなんだよね。その事実を思い出した途端、これ以上この場にいるのがつらくなり私はそっとふたりから目を逸らす。
「私はこれで失礼します」