怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
そう告げてから素早くこの場を去ろうとしたものの、「待って」と手首をがっしりと掴まれた。
「俺は優月に話がある。どこにも行くな」
そう言われて、私はぴたりと動きを止める。
「私は、悠正さんと話すことはなにもありません」
「俺にはある。悪いが、さっきのアレにサインをするつもりはないから」
「でも、それだと――」
私はパッと顔を上げて、悠正さんを見つめる。そのあと視線を一瞬だけ雪平さんに移してから再び悠正さんに戻した。
「それだと、悠正さんは雪平さんと一緒になれませんよ。私はふたりのことを思って離婚するんです」
「は?」
「え?」
私の言葉を聞いた悠正さんと雪平さんから同時に声が上がった。
私の手首を掴んでいた悠正さんの手がするすると離れていき、雪平さんと不思議そうに顔を見合わせる。ふたりの視線が同時に私へと向けられた。
「待って、優月。それはどういう意味だ。俺にはさっぱり意味がわからないが」
「もしかして優月さん、私と隠岐君の関係を誤解している?」
「え……」
今度は私がきょとんしてしまう番だった。