怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~


「でもそれだと、ふたりはどうして最近よくカフェで会っていたんですか? 私、二度も見てしまって」

「それは、仕事の話をしていたのよ」


 私の問いに答えてくれたのは雪平さんだった。


「私は今、優月さんのお友達の代理人をしているでしょ。でも、隠岐君も奥様であるあなたのお友達が心配で私に協力してくれていたの。その話し合いをあのカフェでしていたのよ」


 言われてみればあのときのふたりには笑顔が一切なく、ずっと真剣な表情だった。テーブルの上にはパソコンもあったし、仕事の話をしていたという雪平さんの言葉に納得した。


「それじゃあ私は、本当に全部勘違いしてたんだ」


 そのせいで悠正さんに離婚届を突き付けてしまった。本当は彼のことが大好きだから離婚なんてしたくなかったのに……。

 途端に落ち込んでしまった私の手首を悠正さんが再び掴んだ。


「優月。ここからはふたりで話をしよう」


 落ち着いた声でそう告げた悠正さんが私を引き寄せ、そのままマンションのエントランスに向かって足を進める。

 そのあとを付いていきながら、ふと後ろを振り返ると雪平さんが私たちに向かって笑顔でひらひらと手を振っているのが見えた。

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