怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~

 確か、五十代後半ぐらいの男性だったと思う。

 借金を抱えているけれど体調を崩して働けなくなってしまい返済に困っていると以前からたびたび相談に訪れていた。

 依頼を受けた隠岐先生が借金の整理などをしたところ無事に解決したらしく、すると不思議と男性は体の調子も改善して、再出発に向けて頑張ろうと前向きな気持ちになれたと今日改めて隠岐先生にお礼の挨拶に来ていた。

 そのときの隠岐先生はまるで自分のことのようにうれしそうに『よかったですね』『がんばってください』と依頼者の男性に優しく声を掛けていて、その姿に私はつい仕事の手を止めて見入ってしまった。


「隠岐先生への依頼が多いのは、隠岐先生が優秀だというのももちろんありますけど、それだけじゃなくて、きっと隠岐先生の人柄も理由のひとつですよね」


 隠岐先生はどんな依頼にも親身になって寄り添い話を聞いてくれる弁護士だ。

 つい先日勝利をおさめたばかりの世間の注目を浴びるような大きな事件の弁護を引き受ける一方で、今回の借金トラブルのような個人の依頼も数多く引き受けている。

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