怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
流れるように進む隠岐父子の会話に私だけがまったく付いていけない。ますます私がここにいる理由がわからなくなった。
隠岐先生からは笑っていればいいと言われたものの、少しも笑える状況にない。自然と表情が強張ってしまうのだけど、どうしよう。
すると、隠岐先生の腕が突然私の肩に回され軽く引き寄せられた。
「改めて紹介するよ。彼女が俺の結婚相手の小野坂優月さんだ」
ええっ⁉
今とんでもない発言があった気がして、隠岐先生の横顔を慌てて見つめる。彼も視線だけを私に寄越したものの、特になにも告げずに平然とした顔で再び視線を所長に戻した。
「おとといの土曜日に彼女の母親にも挨拶をしてきた。父さんには昨日話したけど、もちろん俺たちの結婚には賛成してくれるよな」
「ああ、大賛成だ。こんなにうれしいことはない。小野坂さんのような真面目な女性なら安心してお前を任せられる。それに、事務員の彼女なら弁護士としてのお前の仕事も理解してくれるだろうからな」
「これでようやく父さんも安心だ」
「まったく、その通りだ。お前はもう一生独身でいるものだと思っていたから、父さんはもう心配で心配で……」