怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~

 私は共有スペースの横にある給湯室へと駆け込んだ。

 隠岐先生用のマグカップにコーヒーを注ぐと再び共有スペースに戻り、ソファの前に置かれているテーブルにマグカップをそっと置いた。


『どうぞ』

『ありがと……あれ? 自分のはいいの?』

『えっ』


 きょとんとしている私に隠岐先生が続ける。


『いや、俺はてっきり小野坂さんが自分の分のついでに俺の飲み物を用意してくれるのかと思ったから。そうじゃなくて俺のだけだったんだ。わざわざごめんね。ありがとう』

『い、いえ』

『隣座る?』


 ソファの真ん中に座っていた隠岐先生が少し横にずれて私の座るスペースを作ってくれた。


『眠気覚ましにちょっとでいいから話し相手になってくれるとうれしいんだけど』

『は、はい』


 そういうことなら……と、私は隠岐先生の隣にちょこんと腰を下ろした。


『小野坂さんは仕事もう慣れた? 四月からだからまだ一カ月だよな』

『はい。少しずつ覚えているところです。まだあまりお役に立てませんが、しっかりと仕事を覚えて隠岐先生たち弁護士先生方の業務をサポートできるよう頑張ります』

『そっか。期待してる』


 挨拶以外で隠岐先生と言葉を交わすのはこれが初めてだったこともあり、私はかなり緊張していた。

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