怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
『小野坂さんはどうしてうちの事務所で働こうと思ったの?』
眠気覚ましのために隠岐先生が次から次へと私に話題を振ってくるので、それに必死に答える。
『子供の頃に父が弁護士にお世話になることがあったんです。その弁護士さんにとても憧れて私も弁護士を目指すようになったんですけど』
『お、そうなんだ。それじゃあ事務員しながら弁護士の勉強してるの? そういう人もいるよな。俺でよければ教えるけど』
『あっ、いえ、その……弁護士になるのはもう諦めたので』
『なんで?』
『私には向いていないと思いまして』
子供の頃、父が会社で起きた横領事件の犯人として疑われるという事件があった。そのとき父の無実を証明してくれた弁護士さんに強く憧れて、私も大人になったら弁護士になりたいと思うようになった。それを諦めた本当の理由は母に反対されたからだ。
『でも、やっぱり同じ業界で働きたくて事務員を目指しました』
就職活動では、採用情報が出ていた都内の弁護士事務所を片っ端から受けた。いち早く内定を貰えたのが隠岐総合法律事務所で迷わず就職を決めた。