怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~

 私の話を聞いた隠岐先生が『そうなのか』と静かにうなずく。


『向いている向いていないは、やってみないとわからないと思うし、俺もそんなに自分がこの職に向いているとも思っていないけど』

『そんなことないです。隠岐先生はとても向いていると思います』

『そう思う?』

『はい。隠岐先生はとても頼りになる弁護士さんです』

『はは。そっか。ありがとう』


 事務員として働き始めてまだ一カ月しか経っていないけれど、隠岐先生の仕事振りを見るたびに思っていた。隠岐先生はとても責任感が強くて頼りになる弁護士さんだって。


『隠岐先生は今とても大変そうですよね』


 ぽろりとついそんな言葉がこぼれていた。隠岐先生がすぐに理解してくれたようで『収賄事件のこと言ってる?』と苦笑した。


『まぁ大変といえば大変だな。事件内容としては過去にも何度か扱ったことがあるからそうでもないんだけど、今回はちょっと風当たりが強いから』


 ちょっとどころかだいぶ強い気がする。吹き飛ばされずに立っていられる隠岐先生はすごいと思う。だから、本音を聞いてみたくなった。


『つらくはないですか?』

『どうして?』

『どうしてって……。だいぶいろいろと言われているようなので』

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