怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~

 隠岐先生の依頼人は収賄事件の犯人として疑われているものの、本人は無実を主張しているらしい。

 でも、マスコミなどはその人を犯人だと決めつけるような報道を繰り返していて、世論もそう思っている。

 隠岐先生はその波に立ち向かっていた。多くの人からバッシングを受けようとも、たったひとりの自分の依頼人の無実を証明するために奮闘している。その姿が、かつて父の冤罪を晴らしてくれた私の憧れの弁護士さんと重なって見えた気がして、トクンと心臓が大きく波打った――。


『それじゃあ俺はそろそろ仕事に戻るな』


 隠岐先生が残りのコーヒーを一気に飲みほし、ソファから立ち上がる。空になったカップを手に取り給湯室へと運んでいこうとしたので『私がやります』と声を掛けて、彼の手からカップを預かった。


『コーヒーありがとう、小野坂さん。美味しかった』


 隠岐先生はそう言い残し、私に背を向けると共有スペースを出ていこうとする。その背中に向かって私はとっさに声を掛けていた。


『隠岐先生! 私は隠岐先生の味方です。応援しています』


 私にはコーヒーを淹れることしかできないし、眠気覚ましのための話し相手になることしかできないけれど、少しでも隠岐先生の力になりたいと思った。

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