怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
「なんだか今の私たちの会話が夫婦っぽいなと思って」
晩ご飯や帰宅時間のことを話していたらふとそんなことを思ってしまった。
ついこの間まで弁護士と事務員という関係だった私たちが、こんな会話をするようになるとは信じられない。
そのあともクスクスと笑っていると、「まったく……」と悠正さんが少し困ったように息を吐くのがわかった。
そのまま私へと近付いてきて、頭にポンと手を乗せる。イスに座っている私と視線を合わせるよう高い背を屈めて、私の顔を覗き込んだ。
「夫婦っぽいじゃなくて俺たちはもう夫婦だろ。俺の奥さんだって自覚しっかり持てよ」
そう告げた隠岐先生の唇が私の頬に軽く触れて離れていく。思わずビクッと体が跳ねてしまった私を見て悠正さんが小さく笑った。
「それじゃあ仕事に行ってくる。なるべく早く帰るようにするから、またあとで」
屈めていた腰を戻し、すっと背筋を伸ばした悠正さんが私に背を向ける。カバンを手に取ると、カフェを後にした。
その背中が見えなくなるまで見送った私は、ふと指で自身の頬に触れてみる。
――悠正さんにキスをされた。
微かだけれどそこにはまだ彼の唇の感触が残っている。