8月25日(後編)
平野くんは水樹くんの気持ちに気づいてたんだ、きっと。


「だから待つよ。紗良ちゃんが求めてきてくれるまで、俺ずっと待ってる」

そう言った水樹くんに、久しぶりに抱きしめられた。

「サンタの格好してても紗良ちゃんは甘いね」


と力をこめて抱きしめる水樹くんに胸が苦しくなる。

わたしが再び水樹くんを求める…

そんなの、もう今だって求めてる。


だけど、それを口にできないのはやっぱり怖いからだ。


また水樹くんを苦しめるんじゃないか?とか、傷つく言葉を不意に言われるんじゃないかと。

これまでだって散々傷つく言葉は言われてきた。

それには慣れているはずなのに…


それが好きな人からとなると話しは別のようで…

未だに『つらい』と言われたあの日のことを思い出すと胸が痛む。


このまま寄りを戻したって、何も変わっていないわたしは再び水樹くんを苦しめるに違いない。


そう思うと、水樹くんの背中に手を回すことはできなかった。
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