それは夕立とともに
 期待の目を向けると、彼女は頬を真っ赤に染めて下唇を噛んでいた。

「"332415"って。ここのジンクスの?」

「……っ」

 栞里ちゃんは恥ずかしそうに俯いたままで否定も肯定もしなかった。


 ーー「好きな人の名前を数字変換して押した後に、受話器に告白するんだって」

 ーー「そうしたら近日中に両思いになれるらしいよ?」


 ーーまさか、ほんとに……?

 おまじないが叶ったのかどうかは半信半疑だが、俺は彼女に近寄り、できるだけ優しい声で言った。

「栞里ちゃん、目ぇ閉じて?」

「……え?」

 拾ったスマホを彼女の手に渡す。彼女は涙目を瞬き首を傾げた。

「ね、お願い。さっきのお返しだと思ってさ」

 柏手を作ってお願いすると、彼女は静かにまぶたを伏せてくれた。

 丸く滑らかな頬に涙が伝い、紅く潤う唇に目が釘付けとなる。

 心臓の鼓動がまたバクバクと内側から響き、やかましいぐらいだ。

 そのまま顔を傾けて、彼女の唇に自分のそれを重ね合わせる。触れるだけのキスで顔を離すと、彼女と至近距離で目が合った。

 栞里ちゃんは長いまつ毛を上げて潤った瞳に俺を映していた。サッと身を引いて驚いてはいるが、怒ってはなさそうだ。

「ね、知ってる? 恋愛ジンクスで結ばれたカップルがここでキスすると永遠に結ばれるんだよ?」
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