追放されたハズレ聖女はチートな魔導具職人でした
父親に頭を撫でられながら、ココは照れくさそうに笑う。

彼のいうとおり、何の変化もなければ、ココの人生はそのような形になったに違いない。

変化は、ココが一〇歳に村の外からやってきた。

「ココを、神学校に……?」

「その通り。彼女には『加護』がある。ならば、然るべき教育を施さねばならない」

遥か遠くの聖都からやってきたという神官は、案内された村長の家でココの神学校への入学を告げた。

それは要請であるとか、提案といった類のものではなく。完全なる命令だった。

「お話は光栄ですが、ココはまだ一〇歳。ひとり遠くの街にやるには、幼すぎます」

「神学校への入学に年齢は関係ない。神の教えを学ぶのに、早いも遅いもないようにな」

「は、はぁ……」

村長は神官を前に、冷や汗を流した。

家の外には、村人たちが集まっている。神官に帯同してきた聖騎士たちが入口を守っているため、村人は窓からこっそりと中を窺っていた。

その視線をひしひしと感じながら、村長は神官に尋ねた。この国での一般的な感覚として、神官の申し出を断ることは不可能に近い。しかし、黙ってココを差し出すような真似はできなかった。

これまでココが村に与えた『平穏』という恩恵がどれだけ貴重なものか、ある程度の年齢の者ならばよく分かっている。

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