追放されたハズレ聖女はチートな魔導具職人でした
不作が続けば、すべての村人が冬を越すことはできない――それがココが村に生まれる以前の常識だったのだ。

「ひとつお聞かせ願いたい。神官様は、いったいどこからココのことをお聞きになったのですか?」

村長の疑問はもっともだ。

彼らはココの存在を誰かに話したことはない。積極的に隠してきたわけではないが、同時に声高に喧伝したこともなかった。

「すべては神の思し召し。我らの理解の及ばぬことだ」

「な、なるほど、その通りですな」

神官は村長の質問に答えるつもりはないようだった。

神殿は神秘のベールによって覆い隠されていることで、その権威を保っている。田舎の一村長にそのベールの向こう側を覗かせるようなことはしない。

「次の春。若葉が芽吹く頃に迎えの神官を差し向ける。学びは幾年にもなるだろう。日々の生活は学校側が保証するが、最低でも三年は戻ることはできない。きちんとした準備をしておくように」

「……わかりました」

改めてそう告げられてしまえば、村長に頷く以外の選択肢はない。

神殿に逆らうなど、王家でもなければ不可能なのだ。

「では、あの子をよろしくお願いします」

「無論。女神様に選ばれし者を粗略に扱うことはない。神学校で大いに学び、あの子供はより神の僕として成長できるだろう」

果たしてそれは、本当にココのためになるのだろうか。

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