追放されたハズレ聖女はチートな魔導具職人でした
両親が抱いている不安の大きさは、そのままココへの愛情の大きさだ。

ココはそれに気付き、母の背中に手を回す。

いつも背負われていた背中が、悲しげに震えている。

「学校でお勉強がんばって、急いで帰ってくるよ。そしたら、また一緒に暮らせるよ」

そうだ。

離ればなれになるとしても、限られた時間に過ぎない。

『前』の自分とは違って、『今』の自分がいく場所はちょっと離れた場所にある学校に過ぎない。卒業すれば、またこの場所に戻ってくることができる。

「お勉強したら、村のみんなのためにもなるよ」

「ココ、あなたは本当にいい子ね。でも、絶対に無理はしちゃダメよ」

ぎゅっと少しだけ強い力で抱き締められ、息が苦しくなる。

(わたしは絶対、ここに帰ってくる。ここにはわたしを必要としてくれる人たちがいるんだ)

「だいじょうぶだよ、お母さん。わたし、がんばるから」

自分を育ててくれた両親への恩返しとか、村の人々への親愛とか、いくらでも理由は並べられる。

だが、その中でも一番大きなものは、自分自身がここに戻ってきたいと思っているからだ。

「がんばって、立派な神官様になるよ」



先の神官の言葉通り、迎えの一行は春にやってきた。

母は何枚も服を縫い上げ、それでもこれから体が大きくなるであろうココのために、季節ごとに新しい服を送るつもりだった。

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