花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
とは言え、知りたい気持ちには勝てず、体をもじもじさせながら口を開く。
「あのね、マルシェでフィデルに会ったじゃない?」
「フィデル? ……あぁ、フィデルか。会ったね、それがどうかしたかい?」
「エトリックスクールに送ってもらう途中で、実は打ち明けられたの。フィデルは本当の名前じゃないって」
反応をうかがうようにエミリーがじっと見つめる中、オレリアは「へぇそうかい」と驚く様子もなく相槌を打つ。
やっぱりオレリアは知っているとエミリーは確信し、膝で急ぎ歩いてオレリアの元へと戻っていく。
「それでね、色々タイミングが悪くて、名前を聞きそびれてしまっていて。……オレリアは知ってるんでしょ? 彼の本当の名前を」
「あぁ、知ってるよ」
「やっぱり! 教えて!」
エミリーは身を乗り出し期待を込めてオレリアを見つめる。
オレリアはわずかに首を傾け考える素振りをしてからあっさり言い放った。
「嫌だね」
拒否されると思っていなかったエミリーは衝撃で目と口を大きく開き、オレリアの両腕を掴んで駄々をこねるように揺らす。
「隠さなくたって良いでしょ、ケチ!」
「姿が戻ったら、本人に聞けばいいだろ? それよりクッキーのカスがついた手でベタベタ触らないでおくれ。汚いじゃないか」