花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
オレリアの店の在庫が無くならない限り、父の魔法薬は売れないかもしれないと、エミリーが諦めのため息をついた時、男が意味深な笑みを浮かべた。
「あるもの全部、その値段で買ってやってもいいよ」
「ほっ、本当ですか! 全部で二十本。合計で16000エネルです!」
有難い申し出に、ぱっと表情を明るくさせたエミリーだったが、馴れ馴れしく男に手を掴まれ、一瞬で口元が強張った。
「あぁ。ただし、お嬢さんが俺を今日一日もてなすのが条件だ」
「ふ、ふざけないでください」
掴まれた手を払いのけようとしたが逆に強く手首を握り締められ、エミリーは痛みで眉根を寄せる。
シアメルと御者がほぼ同時に「お嬢様!」と声をあげ割って入ろうとするも、男にギロリと睨みつけられ動きが止まってしまう。
そして、男の連れのふたりは悪い癖がまた始まったと呆れ顔を浮かべるだけで止めようとはしない。
「お嬢様。……もしかして、メイルランド辺境伯のご令嬢か? 令嬢自ら売り子をしているなんて、没落寸前って噂は本当らしいな」
貴族以外にまで実家の話が広まっているだなんてと唖然とするも、すぐにエミリーは毅然とした態度へと改める。