花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
下卑た笑い声を交えてのひと言は小馬鹿にされているようにしか聞こえず、男の手を払い落とした。
「申し訳ないけど、うちにはあなたに売れるものなどひとつもないわ。お引き取りください」
「金がなくて困ってるんだろ? 全部買ってやるって言ってるんだから、強がるなよ」
「どんなに困っていたとしても、あなたにだけは頼りません。さっさとそこを退いてちょうだい。商売の邪魔よ」
冷たく言い放ったエミリーに男は歯噛みをしたが、思い直したように薄く笑って懐から取り出した布製の袋を台の上へと投げ置いた。
聞こえたジャラリという擦れた音と、布の表面に浮き出ている凹凸感から、中に入っているものは貨幣で間違いないだろう。
「中に、ちょうど16000エネル入ってる。こっちは懸賞金のかけられた凶暴化した獣を退治したばかりで疲労困憊だ。たっぷりサービス頼むよ」
袋の膨らみ具合からして、それくらいの金額は入っていそうだ。
16000エネル分の積み重なった硬貨と可愛げのある双子の弟たちの顔を同時に思い浮かべてしまい、エミリーは思わず口ごもる。
その様子に男はにやりと笑うが、次の瞬間、ドスンと重々しい音を響かせて、細やかな刺繍が施された貨幣袋が16000エネルの横に投下される。