花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
フィデルからさらりと飛び出した言葉にエミリーは顔を強張らせた。
聖樹は大木になればなるほど実る果実や魔石が多くなり質も向上する。
そのため立派な聖樹はみんな貴族たちが所有し、専属で聖女を雇い浄化にあたらせている。
その中でも一番の大木は国王が所持しているもので、大聖樹と呼ばれている。
大きさに比例して吐き出す毒も強力で、対応する聖女もそれ相応の力を有していないとならない。
そのため選ばれるのは聖女の中で特に能力の高い者でなければならず、任に就くと同時に大聖女という地位を得る。
大聖女だなんて大それたことをと心の中で萎縮しつつも、エミリーは嫌悪感たっぷりに首を横に振る。
「それだけは丁重にお断りするわ」
「……な、なぜだ」
「大聖女は王族仕えだからよ。聞いたことはない? エイヴァリー国王一家は美形揃いで剣術にも優れているけど、冷酷非道だって」
そっと周りを伺ってから声を潜めつつ飛び出したエミリーの言葉に、フィデルはしばし動きを止める。
「れ、冷酷非道なのか?」
「そうよ。言うことを聞かなかったり、少しでも気に食わないことがあったりするとすぐに剣を抜くんだって。中でも、第二王子のレオン様はひどく女癖が悪いみたいなの。自由気ままに国内を放浪し、各地で作った恋人は三十人を超えるらしいわ」