花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
冒険者はもちろんのこと、凶暴な獣と隣り合わせで生きている一般人にとっても常備薬として必要なものばかりだ。
「……で、でも、それなりに売れてはいるのでしょう? 在庫ももうそんなにないようだし」
御者の後ろにある箱はひとつだけで、その中身は小瓶が十本ほど。並べられている物もその同数で、あわせて二十本ほどしか残っていない。
しかし、御者は小さく首を横に振り、言いづらそうに打ち明ける。
「今回持って来た分は、これで全部です」
「こ、これで全部ですって。お父様に五十本は作っておいて欲しいとお願いしたのだけれど」
唖然としているエミリーの横に並んだシアメルが、顔を伏せつつその疑問に答えた。
「えぇ。旦那様はきっちり五十本お作りになりましたよ」
「それならどうして」
「プランダで風邪が流行っておりまして、頼って来られた町の民の皆様に旦那様が回復薬を配ってしまって。風邪だけでなく、症状によっては毒消しや麻痺治しまでお渡しになり、残ったのがこちらです」
エミリーは残りの個数を数え直し、頭の中で引き算しつつ「はぁ」とため息をつく。