彼の顔が見えなくても、この愛は変わらない
花壇へ向かおうとかと思った矢先雨が降り出して、それも取りやめにした。


今日も傘を持っていないから、また熱を出してしまうかもしれない。


さすがにそんなことは繰り返せなかった。


1人、早足で帰路を歩いていると雨は徐々にやんできていた。


空を見上げるとうっすらと虹が出ている。


「わぁ」


思わず立ち止まり声をあげる。


虹を見るとなにか幸せなことがありそうな予感がする。


そんな予感に心踊らされながら視線を戻した時、歩道に近づけるようにして白い車が停車しているのが見えた。


「矢沢さん」


運転席から出てきたスーツ姿の男性が私の名前を呼ぶ。


その声にハッと息を飲んで、自分の表情が険しくなるのを感じた。


微笑もうとしても難しかった。


つい視線を外して気がついていないフリをして、通り過ぎようとする。


「話を聞いてくれないか」


腕を掴まれて引き止められた。


足を止めて見上げると佳太くんの泣きそうな雰囲気が伝わってきて胸がチクリと痛んだ。


どうして佳太くんが泣きそうなの?


沢山泣いたのは私の方なのに。
< 125 / 141 >

この作品をシェア

pagetop