白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる
 それは身体の弱いロゼリエッタが体調を崩して、尋問に支障が出ることを問題視しているのか。

 一応、丁重に扱う意思はあるらしい。そう思うと何だかおかしくなって、ロゼリエッタは笑みを深めた。

「私がここで傷を負わずとも、マーガス王太子殿下暗殺の罪を問われて投獄されるのではありませんか? そして処刑されて死んだとして、騎士様が何を心を痛めることがありましょう。私の命など、騎士様には何の価値もないものではありませんか」

「ロゼリエッタ嬢」

 騎士の声が険しさを増す。怒っているのだと分かった。だけどロゼリエッタだって、怒っている。


 クロードを忘れる為に領地へ行き、心の傷が癒えたらダヴィッドと幸せになると決めた。クロードの方もそれを望んでいたはずだ。


 なのに何故、再びロゼリエッタの前に姿を現したりなどしたのか。

 行方をくらまさなければいけない理由があったのかもしれない。だけどそれなら離れたままで良かったではないか。


 姿を見せるから、助けてくれたりなんてするから――ロゼリエッタはたやすく、心を揺らしてしまっている。

 クロードを忘れようと自分なりに努力して来た。でもそれらは全て、努力でも何でもない、ただの悪足掻きだと思い知らされているに等しい。


 ロゼリエッタ自身が忘れられるはずがないと分かったうえで、時間による解決を図ろうとしていたのだ。

 なのに――傷が癒えきる前に会ってしまっては、どうしようもなかった。

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