白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる
「ダヴィッド様へ認める手紙を他の方に見られるのは恥ずかしいです。それにきっと、私の家族から連絡が行くと思います」

 気持ちを確かめるような言動をしたって彼の心を揺さぶれないことなど分かっている。今さら傷つきたくなくて、ロゼリエッタはシェイドの反応を見なかった。手持ち無沙汰で、スープをすくったスプーンを口へと運ぶ。


 慣れない返しをしたせいか沈黙が先程よりずっと重い。せっかく用意してくれた食事も上手く喉を通らなくなってしまった。

(こんなことではいけないのに)

 強くならなければいけない。

 今はシェイドに保護してもらえてはいるけれど、ロゼリエッタが罪人の烙印を押されたことに変わりはないのだ。いつこの生活が終わるとも限らない。明日や明後日の可能性もある。時間はあるように見えて、与えられていないも同然だった。

「食事が終わってから、ほんの少しの時間でも構いません。お話ができませんか」

 自分を取り巻く状況に関する情報が何もないのは心細い。

 その全てを教えてくれるとは思っていないし、実際にそうではあるのだとしても、隠されるのは意味があるということだ。


 それが"ロゼリエッタだから教えない"だとしても。


「分かりました。では後でお茶の準備をさせましょう」

 もしかしたら要望さえ跳ねのけられるかもしれない。

 心配が杞憂で終わったことに、ロゼリエッタは安堵した。

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