白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる
 次の目覚めは瞼の裏に光を感じてのことだった。

 真っ先にシェイドの姿を探すけれど、ベッドサイドにはいない。椅子も片づけられており、もしかしたらあの光景は熱に浮かされていたせいで見た幻覚なのではないかという気もしてしまう。


 でも、思っていたよりも柔らかだった髪に触れた記憶は指先にまだ残っている。もう一度握りしめ、ゆっくりと身体を起こした。

「ロゼリエッタ様、お目覚めになられたのですか?」

 ちょうどオードリーが部屋に入って来る。真っすぐにベッドに近寄り、サイドボードの水差しを取り替えてから心配そうにロゼリエッタの顔をのぞき込んだ。

「ええ。看病してくれてありがとう」

「当然のことですからお礼を(おっしゃ)っていただく必要はございません。それよりもお身体はいかがでしょうか」

 尋ねられ、自分の身体を見下ろす。

 薬はやっぱり常用しているものだったようで、熱はもう下がっているように感じる。けれどまだ無理をしない方が良いだろう。

 そう伝えると、オードリーはそれが良いと頷いた。水を注いだグラスを手渡され、ゆっくりと口をつける。果実の優しい甘さの溶け込んだ冷たい水が、熱で気怠い身体にみるみる染み込んで行った。


 朝食はミルク粥を用意してもらい、部屋で一人で食べた。

 仕方ないけれど一抹の寂しさを覚える。

 シェイドと二人での食事も、会話もない寂しいものではあるけれど。

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