白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる
「多分だけど、シェイド――クロード様は近いうちに、身柄を拘束されるのだと思う」

「え……?」

「名前も、過去も未来も全て捨ててロゼの傍にいることを選んだ彼が、事情も話さずに君を手放す理由なんてそれくらいしかないだろうからね」

「それは……ダヴィッド様の思い違いだと、思います」

 結局、視線は下がってしまった。

 でもそうだろう。

 ダヴィッドはロゼリエッタを実の妹同然に可愛がってくれているから、慰めようとしてくれているだけだ。


 クロードがその過去を捨てたのはレミリアの為に違いなかった。

 自身が隣国の第三王子アーネストの血を引くと周りに知られることなく、彼女の傍に仕える為だ。


 ロゼリエッタを巻き込みたくなかったという思いも少しはあるのかもしれない。

 だけどそれ以上に彼が優先しているのはレミリアが幸せに嫁ぐことのはずだ。

「どうして俺の思い違いだと?」

「どうしてって……私とクロード様が同じだから」

「同じ?」

 そう。同じなのだ。

 二人して相手には決して届くことのない一途な想いを抱え、諦めきれずに想いのこもった目を向ける。
 お互いの傷を慰めあう関係になれていたのなら良かったのかもしれない。でもなれなかった。なれるはずもなかった。


 ロゼリエッタはクロードに、本当に同じ想いを返して欲しかったから。

「クロード様の気持ちをはっきりと聞いて、そう結論づけた?」

「――いいえ」

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