白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる
「あ、あの……。よろしく、お願い致します」

「うん。一緒に頑張ろう」

 おずおずと遠慮がちに隣に座る。

 ちょうどゲームをはじめるところだったのか、レオニールが手際良くカードをお互いの前に配って行く。クロードがロゼリエッタにも手札が見えるようにしてくれた。


 掌とほぼ同じサイズのカードは、透けることを防止する為に裏側は濃い紺で全面を塗りつぶされているのに対し、表側に描かれたモチーフは一枚ずつ違うようだった。白い縁取りの中に太めの線で植物や人、剣と言ったものが大胆なタッチで描いてあり、しっかりとした線画に負けない鮮やかな色で彩られている。これらのカードで一体どうやって遊ぶのか、皆目見当もつかなかった。

「とても綺麗だけど何だか不思議な絵柄」

 素直な感想が思わず口をつく。するとレオニールが隣国のものだと言った。クロードの家に昔からあったらしい。

 ならばロゼリエッタが知らないのも当たり前だ。でも、それでもクロードは一緒に遊ぼうと言ってくれた。その事実が、とても嬉しい。



 それからはルールが分からないロゼリエッタの為に、クロードはカードを引く度にそれが良いカードなのか悪いカードなのか、レオニールには聞こえないように耳打ちして教えてくれた。けれど、ドキドキして上手く聞き取れない。

 色々と話してくれているのに、内容をちゃんと聞けていないことはクロードに対して失礼だと思う。でも、その都度聞き返すのも申し訳なかった。どうしたらいいのか迷った末にじっとしていると、レオニールが声をかけて来た。

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