白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる
 十六歳になった今でも、いくぶんかましになったとは言え同年代の少女たちと比べると、やはりまだ健康だとは言い難い。

 その身体つきは良く言えば華奢、悪く言えば貧相だった。つまるところ、少女特有の瑞々しさを感じさせるにはかなり魅力が乏しいというのが自己評価だ。その為に人前に出るということに気後れしてしまう。


 そして"知らない人"がたくさんいる場所も、好きではない。

 だから夜会は、できることなら参加したくないものだ。親しい相手からの誘いは申し訳なさを感じつつも体調を理由に断っているし、親しくない相手にはどうせ断るのだろうと思われて最初から誘われないことも少なくない。でも、その方がロゼリエッタとしても気が楽で良かった。


 それが今日は王女から直々に招待状が届いた。さすがに顔を出さないわけにも行かないだろう。


 だけど、王女から招待状が届いたという事実こそがロゼリエッタの心を重くした。

「せめてお兄様とご一緒できたら良かったのに」

 思わず不満がこぼれてしまう。アイリは困ったように眉を下げて笑った。

「そんなことを仰って、レオニール様の申し出をお断りしたのはお嬢様ご自身ではありませんか」

「それは、だって、そうよ」

 分の悪さを感じてロゼリエッタは口ごもる。

 兄のレオニールにも同じ招待状は届けられていた。そして心配性な兄の、一緒に行動しようかという提案を拒んだのはアイリの言うようにロゼリエッタだ。

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