sugar spot
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「よし、集まったなー!」
「うん。何人か遅れて来る方も居るみたいだけど先にお店向かおう。」
定時を迎え、ビルの1階エントランスには割と大人数が集っている。
古淵さんが「行くぞ行くぞ〜」とウキウキ先頭を歩き始め、それに枡川さんが「古淵、お店の場所ちゃんと分かってるの!?」と焦ったように続いた。
今日は営業部全体で、
私と有里の歓迎会を開いてくださるらしい。
幹事は枡川さんと古淵さんの4年目同期コンビで、参加人数も相当のものだ。
会社から歩ける距離のお店へ、ぞろぞろと2人に続いて歩みを進める中で、隣から課の違う先輩に声をかけられた。
「梨木さん。これ、南雲さんから。たまたま俺がさっき会って、ことづけられた。」
「……え?」
「図面見る時ヒントになるかも、だって。」
私に差し出されたのは、一冊の本。
"図面の読み方がわかる本"という、私にぴったりなタイトルが添えられている。
今日のこと、気にかけさせてしまったのかな。
そう思うと申し訳なかったけれど、大事にそれを受け取った。
「……ありがとう、ございます。」
「良かったら有里君とも共有してって言ってたよ。」
「………。」
それは、とても難しいかもしれない。
ちら、と後ろを見遣るとやけに背の高い男が部署の人たちと談笑している。
「(…ちゃんと、笑えるじゃん。)」
私に笑いかける時なんか、嘲笑しか無い。
なんなの。もっとさ、私にも、
…と、そこまで考え始めてそんな思考を持つ自分自体にも苛つきが当然湧き始め、本を握り締めつつ視線を逸らした。