sugar spot
恥ずかしい。
出だしから、既にポンコツを発揮してしまった。
急いで走って自分のデスクに辿り着くと、勿論思った通り、そこに綺麗にマップのリーフレットが鎮座している。
すると、その隣のスマホも、
丁度メッセージの通知を知らせて光っていた。
勿論ここで返信はしないけど、誰だろうと顔認証でロックを素早く解除して、そのバナーの中身だけ確認した。
《これ聴くと落ち着く。》
相変わらずの、短文だ。
むしろこれは、あの能面のメッセージの中なら
長い方に分類される。
一緒にリンクが貼り付けてある曲は、以前参戦したライブの中盤で、あのバンドのボーカルがアコギ一本で弾き語りをしてくれて、号泣したバラードだった。
今も、こうしてふとした時に曲の共有をしている。
今日のチョイス、絶妙でムカつく。
なんか「ちょっと落ち着けば」と、あの能面に抑揚の無い声で、この状況を見透かされて指摘されている気分になった。
それでも結局は、そのメッセージで口角が緩んでいくのに気付いて、慌ててスマホをまたテーブルに置く。
視線を少しだけ遠くに馳せたら、営業2課の島は、今日もがらんとしているのが分かる。
外出している人が多いのだろうし、恐らくあの能面も今日は直行直帰だった気がする。
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《げ、月末!?月末までこの件は放置!?》
《うん。だって今ほんとにバタついてるし。》
《月末とかあと何日あるの〜〜!?
待ってる私達の身になってよ。》
《……ほんとに、奈憂は誰目線なの?》
《でも、営業の人が最近忙しいんだなっていうのは、私が居る家具の流通部隊に、搬入依頼してくる規模の大きさでも分かるから。分かるけど〜〜》
そんな謎の葛藤の末、悔し泣きしたうさぎが「お疲れ」と文字を背負っているスタンプが送られてきて、思わず笑った。
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南雲さん達を、長く待たせるわけにはいかない。
一つ、その場でゆっくりと息を吸って吐き出す。
能面の送ってきたメッセージと、進捗状況を相変わらず気にしてくる女のメッセージのおかげで気が紛れたのか、少し、心臓のリズムが落ち着いた気がする。
マップを今度こそきちんとバインダーに綴じて、
よし、と小さく呟いて急いで来た道を戻った。